
「武道は礼に始まり礼に終わる」という言葉を聞いたことはありますか?剣道には「礼法・作法」といった独特のルールが存在します。
剣道における独特なルール「礼法・作法」とは?
剣道における礼法・作法とは、「相手を敬う心」と「油断のない心構え」を動作で表すことです。相手を敬う心を持ちつつも、いつ攻め込まれてもいいように油断のない心構えを備えることが剣道では必要で、それを絶えず頭に入れておきたいところです。礼法・作法をそれぞれ簡単にいうと、
礼法=礼をおこなうしかた、礼儀
作法=その他の起居・動作の行い方
の事をいいます。剣道には礼をはじめとする、動作ひとつひとつにおいて決め事があり、剣士達はそれらを磨くために稽古に励んでゆくのです。
以前、ガッツポーズをすると一本が取り消しになるという事がメディアで話題になった事がありますが、まさに剣道における礼法・作法に反する行為であったからなのです。
剣道とは単純な「強さ」を求める事ではなく「礼法・作法」の熟練にこそ真の目的があると考えられます。高齢まで末永く剣道に励まれる方が多い所以です。因みに最高段位である八段の受験資格は46歳以上で、なんと75歳で合格された方もいます。
礼法について
道場の出入り
道場に入るときは、神殿に向かって礼をします。神殿のない道場や体育館では、その中心となる、国旗や校旗・校章、応援団旗や神棚などに向かって礼をします。道場の入り口に立ったら、その中心に正対し注目してきちんと立礼します。再び注目して礼は終わるのですから、それから入場します。「礼をしながら入場する。」ではなく、「礼が終わってから」道場に入ります。出るときも同じく立礼をしてから出ることを忘れないようにしましょう。
立礼の仕方
立位での礼の仕方です。因みに稽古や試合で相対した時は「会釈」の礼を、それ以外での道場での挨拶は丁寧な礼となるため、注意が必要です。
相手に正しく向き合い注目した後に、上体を曲げずに背筋を伸ばしたまま前に倒し(試合稽古前後の礼は約15度で注目したまま)、いったん止め、相手と合わせて元の姿勢に戻します。この例は通常は「会釈」といいます。
丁寧な礼は、上体を約45度前方に倒し、目線は自然に下に落とすわけですが、はじめと終わりは必ず相手に注目します。特に終わりの注目はおろそかになりやすいので注意が必要です。
正座の仕方
正座はどのような動きにも対応できる動と静を兼ね、どの座法より腰に負担がかからないという合理的かつ理想的な座法です。
- 左足を後方にひく
- 引いた足の膝をつく
- 右足を左足にそろえ、いったん踞座の姿勢になる
- 右→左の順に指を伸ばして親指を重ねる。両膝拳が一つか二つは入るくらいに開く
留意点
- 正座をする、立つ際は床に手をつかない
- 狭い範囲で向きを変えるときは向きを変える方の膝から動かさない
- どっかりを尻を落としてしまわず、尻と足裏を紙で枚引いたようなつもりで座る
- 長時間座るときは足がしびれないようにわずかに前後に移動しながら座る
- 立ち上がる時はまず踞座になってから立つ
- 正座の場合の手の指はきちんとそろえ、ばらばらに置かないように
座礼の仕方
- 正座の姿勢から、上体の腰を部分から折るような気持ちで背筋を伸ばして前に倒す
- 両人差し指と親指同士の先端をつけて三角形を作り、まっすぐ出して前方の床につく
- 上体を倒し、背中を曲げずに背中の線と床が平行になるまで倒す。手を、指で作った三角形の真上におおむね鼻が来るような位置まで出す
- 背中の直線を保ちながら起こすつもりで上体を起こし、それにつれて両手は膝の上に戻ってくる
留意点
- 上体を起こす時は手を使って起きないこと
- 手の指は開かずにそろえること
- お辞儀の臍、お尻は浮かさないこと
- 視線は相手に注目して始まり、注目して終わること
以上、基本的な礼法でした。時と場合に応じ礼法を使いこなせるようにしましょう